エディショニングペーパーテスト方法

エディショニングペーパーテスト方法

銅版画技法による刷りの評価

有地 好登 / Yoshihito Arichi

有地 好登 / Yoshihito Arichi

日本芸術大学芸術学部教授。
版画学会 副会長
日本版画家協会会員 理事
異なる版種(銅版・石版等)を併用することで派生する相乗効果や特徴を考慮し、版形式でしかなし得ない独自な関節表現の世界を模索する。

有地 好登 公式サイト

テスト方法

銅版画の使用技法により、また製紙の方法や原料によりその印刷効果は異なるため、基本としては紙の選択は作者の好みになるであろう。今回は紙の重量を考慮せずに印刷し、その違いを比較してみる。

原版の使用技法について

A版 エッチングで線彫をした後、アクアチントを数回行い、その後一部墨墨で研磨して調子を出す。エンボス。
B版 軽くオーブンバイティングの上にビュランで彫版する。

印刷方法

凹版用油性黒インク シャルボネ「テール・ドース」1/2+東洋インク黒 1/3
拭き取り 寒冷紗で拭き取り後、裏地、薄いロール紙の手順で拭き取る。
圧力 20枚とも同じ圧力でプレスを通す。
乾燥 厚紙に挟んで乾燥する。

比較

1.油性インクの吸い取り状況 プレス圧力・紙の厚さや薄さに寄っても多少インクの付着度は異なるが、プレス圧力は同一にし、紙の厚さは考慮せずに印刷する。 インクの付着度と線刻の再現性 A—アクアチントのハーフトーン B—ビュランで出来るマクレのインクの付着状況と線刻のインクの量
2.印刷後の紙の状態 印刷後厚紙に挟んで重しを置き、その間3回ほど相紙を取り替える。 (水張り乾燥すると当初はシワ(波)がない状態で乾燥される。しかし作品が置かれた環境(湿度)や時間が経過するに従い波が出てくるので、ここでは自然乾燥に近い厚紙に挟んで乾燥させた) 紙にシワ(波)ができる状況 A—紙面の周辺と印刷された両面の中の状態、エンボス(空刷り) B—紙面の周辺と印刷された画面の中の状態
3.裏面へのインク抜け(油分抜け) 繊維が皮見合う密度や量による。 インク抜けが遅いほうが紙の劣化がしにくい。

総評

エッチング、アクアチント、エングレーヴィングの技法を使用した銅版を印刷する場合は、微細な要望がない限りアワガミエディショニングペーパーの10種全ての紙を使用できるであろう。ただ紙の薄さにもよるが裏面へのインク抜けは極力緩やかに進むことが望ましい。わずかな印刷ムラや腰の強さがないと痕跡が崩れるか霞んでしまう。今回は色刷りではないので、発色効果と紙の耐光性については別の機会に。

各プリントテスト結果と比較表

テストプリントした紙を「油性インクの吸い取り」「印刷後の紙の状態」「裏面へのインク抜け」の3項目に優・良・可の順位をつけて数値化。(優=3 / 良=2 / 可=1)

A版テストの結果

油性インクの取り扱い 印刷後の紙の状態 裏面へのインク抜け 数値 備考
北方 4 イメージ面が波打つ
インク抜けが多い
北方グリーン 4 インク抜けがムラ
北方セレクト 7 -
奉書セレクト 6 -
竹和紙セレクト 7 -
白峰セレクト 8 -
楮未晒セレクト 4 インク抜けがムラ
おかわらセレクト 6 -
白鳳セレクト 7 -
文庫セレクト 7 -

B版テストの結果

油性インクの取り扱い 印刷後の紙の状態 裏面へのインク抜け 数値 備考
北方 3 イメージ面が波打つ
インク抜けがムラ
北方グリーン 4 少しイメージ面が波打つ
北方セレクト 7 少しイメージ面が波打つ
奉書セレクト 7 -
竹和紙セレクト 7 少しイメージ面が波打つ
白峰セレクト 8 -
楮未晒セレクト 4 インク抜けがムラ
おかわらセレクト 6 -
白鳳セレクト 7 -
文庫セレクト 7 少しイメージ面が波打つ

テスト結果