浮世絵「阿波鳴門の風波」(安藤広重)復刻について
江戸時代の浮世絵師、安藤広重が全国の名所を描いた「六十余州名所図会」の1枚であり、シリーズの中でも名作と謳われる浮世絵作品「阿波鳴門の風波」を、当地で栽培した楮(こうぞ)を用いて伝統約な手法で漉いた阿波和紙を用いて復刻を行いました。また、彩色の一部には、徳島産の藍から抽出した顔料が用いられています。
この度の復刻の手本とした作品は、徳島県出身であり日本財界の重鎮として活躍した日本化薬株式会社元会長・原安三郎氏(はらやすさぶろう 1884~1982)が蒐集された初摺りです。
木版画の浮世絵は摺り重ねるごとに版木の劣化が進むため、彫り師が新たに版木を彫り直す後摺り(あとずり)が次々と生まれます。原安次郎コレクションの「阿波 鳴門の風波」は、初摺の中でも特に時期が早いもので、その線描や色彩に広重の意思が実直に反映された作品と言えます。もちろん版木の状態も良く、微細で美しい彫りの線が確認できます。極めて保存状態の良いこのコレクションは、広重が生涯を通じて追い求めた色彩が色鮮やかに息づいていると言えます。
この江戸の気鋭の浮世絵師であった広重の息吹を、当代気鋭の彫り師、摺り師がこの作業に実直に臨みました。
国の伝統的工芸品に指定を受け、徳島県伝統的特産品、かつ地域資源でもある阿波和紙により復刻を行うことで、徳島県の誇る歴史と芸術文化が凝縮されたものとなったと自負致します。阿波を由来とするこの芸術文化が新たな地域文化の創造の源となり、阿波文化の振興に寄与することを祈念します。
この度の復刻事業においては、原画を所有の中外産業株式会社様に多大な御厚意を賜りました。この場をお借りして改めて御礼申し上げます。
一般財団法人 阿波和紙伝統産業会館
2024年2月
9514003
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